1 世界の圧延焼鈍銅箔市場の見通し
世界の圧延焼鈍銅箔は、今後数年間で大幅な成長が見込まれています。2024年には、市場価値は11億3,231万米ドルに達し、2024年から2033年にかけて846万1千TP4TのCAGRで成長すると予測されています。圧延焼鈍銅箔は、銅を薄いシートに巻いて作られ、圧延および焼鈍パターンによって製造される箔の一種で、主に電磁シールドと帯電防止に使用されます。このプロセスにより、箔シートの平面にある粒子構造を持つ滑らかな銅箔が得られます。これにより、非常に優れた曲げ特性を持つ銅が得られ、フレキシブル回路アプリケーションに最適です。
図 世界の圧延焼鈍銅箔市場の規模と成長率（2024-2033年）
2 圧延焼鈍銅箔市場の成長要因と制約
圧延銅箔市場の成長は、持続可能な開発の重視により、世界中で電気自動車産業を奨励する多くの政策が打ち出されたため、リチウム電池の需要増加が主な原動力となっています。EUの新しいCO2排出基準や米国のインフレ削減法（IRA）などの法律は、輸送の電化を加速させており、高エネルギー密度と急速充電機能で知られるリチウム電池は、電気自動車の重要なコンポーネントとなっています。高い導電性と薄さを備えた圧延銅箔は、リチウム電池の理想的な集電体として機能し、電池の性能と耐久性を高めます。さらに、市場は、商品市場の需給の変化に敏感な銅を中心とした原材料価格の変動による制約に直面しています。主要な銅鉱山での生産停止、鉱山会社のコスト削減策、特に電気自動車向けの新エネルギー経済からの需要の急速な増加により、銅価格は継続的に上昇しています。こうした価格変動は、圧延焼鈍銅箔市場の生産コストに影響を及ぼすだけでなく、市場の不確実性を生み出し、生産者と消費者がコストの変化を予測して計画することを困難にし、市場の成長を制限します。
3 圧延銅箔市場の革新とM&A活動
圧延銅箔業界は、重要な生産設備の遅れという問題に直面しており、技術革新と設備のアップグレードを通じて解決する必要があります。たとえば、厚さ0.05mm未満の高品質の圧延銅箔の生産には、高精度の設備と高度な技術が必要です。技術革新には、銅箔圧延プロセス中の厚さ制御、板形状制御、表面品質の向上だけでなく、銅箔表面処理技術の向上も含まれます。これらの技術の向上は、製品の品質と生産効率を向上させ、高品質の圧延銅箔に対する市場の需要を満たすのに役立ちます。企業活動の面では、Wieland Rolled Productsは、Concast Metal Products Co.とRandall Bearings Inc.を買収することで重要な戦略的動きを行い、北米の高級銅および銅合金市場セグメントでの存在感を強化しました。 2024年1月16日に発効するこの買収により、コンキャストの広範な製品およびサービスポートフォリオ、ならびにペンシルベニア州マーズとオハイオ州バーミンガムの高性能鋳造事業が組み込まれることで、ウィーランドの能力が強化されます。一方、住友金属鉱山は、2024年1月17日に発表されたように、FPXニッケル社の株式9.9%を取得することで、ニッケル分野での事業範囲を拡大しました。この投資により、住友はバプティストプロジェクトからの大量のニッケルに対する2次オファーの権利を得るだけでなく、技術協力やプロジェクトの詳細な評価の機会も得られ、年間15万トンのニッケルを生産するという住友の長期ビジョンと一致しています。さらに、JX日鉱日石金属USA社は、2022年4月4日付けでアリゾナ州メサに1億5千万2,900万ドルの土地を取得し、半導体材料事業を強化し、北米および欧州市場向けのスパッタリングターゲット事業の新拠点を確立し、北米における先端材料の中心地としての地位を確立しました。
4 世界の圧延焼鈍銅箔市場分析（タイプ別）
2024年、世界の圧延焼鈍銅箔市場の収益分布は、12μmセグメントがタイプ別に55.30%の市場シェアを占め、6億2,622万米ドルの収益を生み出し、トップを占めました。これに続いて18μmセグメントが19.84%の市場シェアを持ち、2億2,470万米ドルの収益を生み出しました。35μmセグメントは7.82%の市場シェアを獲得し、収益は8,857万米ドルに達しました。他のタイプの圧延焼鈍銅箔を含む「その他」カテゴリは、17.03%の市場シェアと1億9,281万米ドルの収益を獲得しました。これらのタイプを合わせると、2024年の総市場収益は11億3,231万米ドルに達し、圧延焼鈍銅箔市場におけるさまざまな製品タイプからの多様な収益貢献を示しています。
表 2024 年の世界圧延焼鈍銅箔市場規模とシェア（タイプ別）
タイプ | 2024年の市場規模（百万米ドル） | 2024年の市場シェア（%） |
|---|---|---|
12μm | 626.22 | 55.30% |
18μm | 224.70 | 19.84% |
35μm | 88.57 | 7.82% |
その他 | 192.81 | 17.03% |
5 世界の圧延焼鈍銅箔市場分析（用途別）
2024年、世界の圧延焼鈍銅箔市場のアプリケーション別の収益分布は、次のとおりです。両面FPCが5億5,948万米ドルの収益で最大のシェアを占め、総市場収益の49.41%を占めました。これに続いてリチウム電池が3億3,279万米ドルの収益を生み出し、29.39%の市場シェアを獲得しました。片面FPCセグメントは2億2,478万米ドルの収益を上げ、市場収益の19.85%を占めました。その他のアプリケーションを含む「その他」カテゴリは1,525万米ドルをもたらし、市場シェアは1.35%でした。これらの数字は、2024年の市場収益が11億3,231万米ドルと推定される全体的市場収益に対する各アプリケーションセグメントの重要な貢献を強調しています。
表 2024 年の世界の圧延焼鈍銅箔市場規模とアプリケーション別シェア
応用 | 2024年の市場規模（百万米ドル） | 2024年の市場シェア（%） |
|---|---|---|
両面FPC | 559.48 | 49.41% |
片面FPC | 224.78 | 19.85% |
リチウム電池 | 332.79 | 29.39% |
その他 | 15.25 | 1.35% |
6 地域別世界の圧延焼鈍銅箔市場分析
2024 年に北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域における圧延焼鈍銅箔の生産量と市場シェアが増加する具体的な理由は次のとおりです。
北米における圧延焼鈍銅箔の生産量は 3,334 トン、市場シェアは 5.95% と予測されています。この地域の生産量と市場シェアが大きな理由は、高度な製造能力の存在と、ワイヤハーネス、コネクタ、センサーなどのさまざまな用途で銅箔を使用する電子機器や自動車などの業界からの強い需要にあります。
ヨーロッパの生産量は推定 2,669 トンで、4.76% の市場シェアを占めています。この地域の世界市場への貢献は、確立された産業基盤と、フレキシブル プリント基板 (FPCB) やリチウムイオン電池などの用途における銅箔の需要増加によって支えられています。
アジア太平洋地域は生産量が49,190トンと最も多く、市場シェアは87.79%と大きな割合を占めています。この地域の優位性は、特に中国、日本、韓国などの国における堅調な国内需要、支援政策、強力な製造基盤によるものです。これらの国は、急速な工業化、電気自動車の採用拡大、大手電子機器メーカーの存在により、圧延銅箔市場の中核的プレーヤーとして浮上しています。
これらの地域の生産量と市場シェアは、産業需要、技術の進歩、地域経済の成長などの要因の影響を受け、さまざまな用途における圧延焼鈍銅箔の需要を促進します。
図 2024年の世界圧延焼鈍銅箔生産市場シェア（地域別）
世界の圧延銅箔市場のトップ3社
7.1 JX日鉱日石
会社概要・事業概要：
JX金属は、銅、金、銀などの非鉄金属の開発、採掘、製錬、精製、販売を行う金属製品会社です。また、銅箔、半導体材料、精密圧延銅、銅合金製品、特殊鋼製品の製造・販売も行っています。
提供される製品:
JX日鉱日石では、用途に合わせた圧延銅箔を各種取り揃えております。HA、HA-V2製品は、光ピックアップ、ハードディスクドライブ、LCDモジュール、車載用フレキシブルプリント基板（FPC）に使用されるフレキシブル圧延銅箔です。これらの処理済み圧延銅箔は、大きな結晶粒と均一な結晶配向で設計されており、優れた柔軟性により割れを最小限に抑え、低反発力による高い柔軟性を備え、耐振動性を大幅に向上させます。
2024年の売上高:
2024年、JX日鉱日石の圧延銅箔の収益は6億4,155万米ドルと報告されており、市場でのトップの地位を維持しています。この大きな収益は、フレキシブルプリント回路やリチウム電池など、さまざまな用途に使用される高品質の銅箔を含む同社の包括的な製品ラインに起因しています。同社の継続的な技術革新の取り組みと強力なグローバル販売ネットワークがこの大きな収益数値に貢献し、圧延銅箔市場におけるTier 1プレーヤーとしての地位を強化しています。
7.2 福田
会社概要・事業概要：
福田金属箔粉工業株式会社は金属製品の製造・販売を行っております。金属箔、金属粉等の生産のほか、建材、梱包材等の製品も取り扱っております。
提供される製品:
福田金属箔粉工業では、長年にわたり販売している標準品として極薄ロール銅箔[RCF-T5B]を取り扱っています。この箔は、通常の粗面化処理に加え、サブミクロンの極細粗面化処理を施しており、銅箔表面の精度と均一性が求められる用途に高品質でご使用いただけます。
2024年の売上高:
2024年、福田コーポレーションは売上高と営業利益の大幅な増加を伴う重要な財務実績を報告しました。この力強い財務成長は、同社の効果的な戦略と圧延焼鈍銅箔製品に対する市場の需要に起因すると考えられます。2024年の圧延焼鈍銅箔の収益は9,899万米ドルで、安定した市場プレゼンスと世界市場における同社の製品に対する継続的な需要を反映しています。
7.3 ヴィーランドロール製品
会社概要・事業概要：
Wieland Rolled Products NA は、北米における銅および銅合金のシート、ストリップ、箔、チューブ、加工部品の大手製造業者および加工業者です。同社は主に銅および銅合金の加工に従事しており、建築、軍需品、自動車、貨幣、電子/電気部品の 5 つの主要最終市場で使用されるステンレス鋼や炭素鋼などの他の金属の再ロール加工や成形も行っています。
提供される製品:
Wieland Rolled Products NA は、薄帯製品工場でさまざまな圧延および表面処理された銅箔および銅合金箔の製造を専門としており、マイクロエレクトロニクス、エネルギー、医療、その他の業界に対応しています。これらの高性能銅箔は、10 ミクロンから 400 ミクロン以上、最大幅 920 mm まで、幅広い厚さと表面処理で提供されています。同社はまた、さまざまな強度、伝導性、その他の特性を持つ複数の銅合金、さまざまな種類の薄型および大型の保護および接着強化表面処理、オプションのニッケルめっきも提供しています。Wieland の製品は、世界中の顧客の特定のニーズを満たすように調整されており、圧延銅箔の供給において優れた品質とサービスを保証します。
2024年の売上高:
ウィーランド・ロールド・プロダクツは、圧延焼鈍銅箔の収益が大幅に増加し、堅調な業績を示しました。同社の2024年の収益は7,748万米ドルと報告されており、業界での大きな市場プレゼンスと成長を示しています。この大きな収益は、北米における銅および銅合金のシート、ストリップ、箔、チューブ、および加工部品の製造業者およびコンバーターとしてのウィーランドの主導的地位に起因しています。さまざまな圧延および表面処理された銅および銅合金箔を含む同社の広範な製品ポートフォリオは、マイクロエレクトロニクス、エネルギー、医療、およびその他の業界に対応しており、2024年の強力な収益創出に貢献しています。
